20世紀の後半の知的世界をリードしたフランスの哲学者・思想家・作家たちのなかでも、どこにでもいながら、どこにもいない、まったく独自の光芒を放っていたロラン・バルト。記号学者、構造主義者、批評家、文化理論家、作家・・・あらゆるジャンル分けを超えて、そのつどまったく類のないエクリチュールを生み出してきたバルトは、同時に、毎日ピアノを弾き、ときおり、色を使った、独特の統一性のあるデッサンを生むアーティストでもあった。今回、色の音楽が立ち昇るかのようなそのデッサンを展示しロゴスとパトス、理性と感性との絶妙なバランスを――けっして苦しみなしにではなく――生きた不思議な作家バルトの《悲劇的な幸福のモメント》を浮かび上がらせる。類い希な日本論『記号の帝国』によって、わが国とも特別に関係の深かった思想家の内なる《色の響き》に耳を傾けたい。
■ポンピドゥーセンター所蔵のロラン・バルトのデッサン約50点を展示。バルトのテクストの抜粋と合わせて展示することで、死後23年経った戦後フランス思想の《星》の内的世界を浮かび上がらせる。
■日本初の国際バルトシンポジウムも合わせて開催し、学術的な解明も行う。