第十八回紀念祭寄贈歌 《 紫淡く 》 紫淡くたそがるゝ 向ヶ丘にわが立ちて 下界はるかにながむれば さても汚れし人の世よ 二、 玉ちりばめしおばしまの かゞやき渡る高どのに まづしきものゝ血をすゝり 肉をはむてふ鬼ぞすむ 三、 駟 見よ幾むれの魔神こそ 都大路を馳せ狂へ 四、 かゝるいぶせきうつし世に 入るべき山はあらじてふ 人に示さんほこりてん 夢安らけき武香陵 五、 やよ若人よいましめて よしなき智慧の杯を あゝとるなかれそが中に 毒ある酒ぞ薫るなる 六、 かのいざなひの汐くらき 底なき淵にのぞむとも なが雄心をはげまして おそれおのゝく事勿れ 七、 のろひに長 若き血しほをつゝむなる 武者振をのみまもるなり 八、 心の玉をみがかんに 他山の石をなにかせむ 行けなが道の一すぢを ゆめふみ迷ふ事勿れ 九、 夢かさめずに思出の わがほゝゑみの唇に 秘めて語らずかくれつゝ 尚のこりたるほこりあり 十、 この誇こそ自治寮に 三年の春を過してし 三年の秋を送りてし わが若人の命なれ 十一、 たのしき今宵此むしろ わが歌ひくゝ拙くも かはらぬ色に染め出し 心の響君よきけ 十二、 つくしの果に今よ今 うたげのむしろうちひらき おなじ思の一百人 杯めぐるたのしさよ (明治四十一年 福岡大) |