トップ / 寮歌集 / 東皇回る

上のページに戻る戻る

東和寮落成紀念歌 《 東皇回る

井上萬壽蔵・作詞/矢野一郎・作曲

一、
東皇かえる暁色に    見よやここにも春多少
芳艸籬下に萌え初めて 梅梢一朶綻べば
渾身の血はたぎり出で  豐頬光る自治の春

二、
ひょう一過梧葉暮れ   空しく高し満架の書
黄昏せまる幽棲に    梵鐘の聲絶ゆる時
悲酸の涙うるほひて  客愁深し自治の秋

三、
夢魂驚き窓推せば   三層樓は今何處
人生何ぞ此の地のみ  有為転變を免れむ
塵寰じんくわん捨てし此の城も  栄枯の定め知りぬ今

四、
高臥の眠覺めぬれど   色うつろはぬ橄欖樹
記すや否や年の   春嬉秋思の友と友
歳華は待たず向陵に  匆々二十九星霜

五、
残礎の跡は影消えて  様改めぬ舊山河
されど朽ちせぬ傳統の 依稀たる光消ゆべしや
されど易らぬ汗青の  改むべしや其の姿

                      (大正八年)

印刷用ページ表示印刷 上のページに戻る戻る