トップ / 寮歌集 / 春蟾かすむ

上のページに戻る戻る

第十七回紀念祭寮歌　《 春蟾かすむ 》

長瀬貞一・作詞／井口春久・作曲

一、
春蟾（せん）かすむ朧夜は　一白彌（わた）る十里
沈淪（ほろび）の影の痕もなく　悲愁の姿今いづこ
彩雲薫る裡なれば　朱霞落杯の心かな

二、
朱霞落杯の人の世も　さめぬ綾羅の夢ならじ
夕べ魔神の荒（すさ）ぶとき　闇の息吹は野分して
揺落の影閃めけば　殘香あせて春逝かむ

三、
覺めよ怡楽の春の夢　沈香（じんこう）うするる濁り世を
祝（しゅくだ）の侫は問はずとも　義魄の太刀のいや冴えに
胸の血潮の若ければ　蹴りなば蹴らむ崑崙も

四、
あゝ滄溟の霧の間に　呼ばゝ應へむ五大洲
鼇波（がうは）は高し東海の　男の兒の意気を示すべく
扶揺待つ間を向陵に　籠りて成りぬ鵬の翼

五、
起たずや健兒時は今　悲歌慷慨も何かせむ
自覺の光ひんがしの　空に榮えけむ曙を
黙示に闡（ひら）くわが希望（のぞみ）　起たずや健兒時は今

六、
けふ十七の紀念祭　銀燭はゆる歡樂の
筵（むしろ）に集ふ丈夫（ますらを）が　崇（たか）き理想の溢れては
聲幽渺の空に入る　自治の韻（しらべ）の尊しや

　　　　　　　　　　　　　（明治四十年南寮）　　

印刷用ページ表示印刷 上のページに戻る戻る