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第三十六回紀念祭寮歌 《 烟り争ふ春霞

♪昭和50年版寮歌集準拠:
♪現状採譜:

榎本謹吾・作詞/安藤煕・作曲

一、  憧憬あくがれ
烟り争ふ春霞  春は都の花に暮れ
よし浮かれ男はうかるとも  我は浮かれじ永劫に
知恵と正義まことと友情の  泉を秘むと人のいふ
彌生が岡を慕ひつゝ

二、  祝宴うたげ
あゝ憧れの旅にして  森羅もの万象みなしゞま黄昏の
鐘丘の上に響く時  希望のぞみの峯に辿りえし
盡きぬ祝宴うたげ歓喜よろこびに  柏の蔭に夜もすがら
自治寮の歌高誦せん

三、  旅愁さびしみ
秋玲瓏の月の影  其の月かげに誘はれて
岡べに集へる旅人の  同じき感懐おもひはありながら
同じき口舌くちはありながら  かたみに語らふ友をなみ
故里の彼蒼そら仰ぐ哉

四、  覺醒めざめ
夢より夢のさすらひに  橄欖オリヴの森に行き暮れし
空虚うつろなる名の雅男みやびをよ  捨てよ藝術たくみの銀笛を
救世ぐぜの黙示を悟れかし  飢餓うゑ呪詛のろひ悲歎かなしみ
高鳴る民衆たみ潮騒しほざゐ

五、  出征かどで
冶に居て亂を忘れじと  淋しく強く矛を執り
雄々しく起てる新人よ  玉杯花を浮かべては
美酒うまきかたみに汲み交し  光栄ある門出祝はなん
三十六の紀念祭

六、  別離わかれ
流転るてんすがたさながらに  あゝ三春の行樂も
今は帰らぬ夢なれや  春愁心結ぼれて
追憶おもひでの袖しほるれば  昔語りはこゝろせん
あゝ向陵よ向陵よ

                (大正十五年)

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