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第二十三回紀念祭寮歌 《 ありともわかぬ

久能木慎治・作詞/星野龍猪・作曲

一、
ありとも分かぬ薄雲に  彌生の春もほのめけば
光さみしき白銀しろがねと  緑をうらに表にし
ひろごるゆめ彩衣あやごろも  年はふりたり二十三

二、
含めば甘き花びらの  紅の頬かすめては
淡き愁のいざなひに  解き得ぬ秘密ありとしも
生命をづる小羊の  ちひさき涙人知るや

三、
この世のいのち一時に  こめて三年をたゆみなく
淋しく強く生きよとて  今はた丘の僧園に
あしたの鐘も鳴り出でて  黙思に笑むや友と友

四、
若き日の影仰ぐべき  光も消えて追憶おもひで
青き霧降る中にして  赤き灯もゆる驕楽の
丘の三年はひたすらに  吾等が夢の住むところ

五、
世は諒闇の憂こめ  萬象ものみな聲をひそめては
今宵紀念の歌筵  音なくすべる夕づつに
光を望む若き子の  生命の歌もなやみあり

                    (大正二年北寮)

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